登山を趣味に楽しむ人たちにとって「登山ストック」は備えておきたい必須アイテムの1つです。しかし、初心者にとっては選ぶのも、適切な使用方法を理解するのも迷うはず。
そんな人たちにのために、今回は「初心者でも失敗しない登山ストックの選び方と使い方」をおすすめ人気製品とあわせてご紹介します。
登山ストックとは
登山ストックとは、徒歩で長距離を旅していた時代に木の枝を杖として使用していたのが由来とされています。ストックと言うとスキー用のものと混同してしまうため「トレッキング・ポール(Trekking Pole)」と区別してよばれるようになってきました。
現在は、軽量化された金属製のものであり長さの調節機能やコンパクトに収納できるものなど、使用目的に応じたさまざまな種類を選ぶことができます。登山ストックは一見便利なアイテムに見えますが、使用にはメリットとデメリットをきちんと理解しておくことが必要です。
メリット
登山ストックを使用するメリットとしては、下肢(足)への負担や膝への衝撃を軽減したり、バランスの維持をサポートできる点です。
登山ストックを利用すると腕の筋力を利用して歩行するため、自然と下肢への負担や膝への衝撃を和らげることが可能になります。また、歩行中に少し体幹がふらついたときに登山ストックでバランスを保持したり、姿勢を立て直すことが可能です。
デメリット
登山ストックを使用するデメリットとしては、長時間の登山の場合では登山ストック自体の重量(1組2本300~600gほど)が身体への負担になりえるという点です。
また、初心者の場合では特に登山ストックの使用可否の判断が難しいために事故やけがの原因になってしまう危険性もあります。
さらに、登山ストックを適切に使用しない場合では、登山ストックに頼った歩き方になり、バランス感覚や下肢(足)などの筋力が低下するケースもあることを理解しておくことが大切です。
登山ストックの種類
登山ストックと一言で表しても実は、いろいろな種類があります。こちらでは、登山ストックの種類とそれぞれの特徴についてご紹介しましょう。登山ストックは、グリップ(手で握る部分)の形によってT字型とI字型の2種類があり、使い方も異なります。
T(ティー)字型
手の平で包み込んで握ることができるようにグリップ部分がT字の形をしたタイプ。こちらのタイプは、ストックに体重をかけながら歩行することを想定してデザインされたものであり、片手の1本のみを使用する登山ストックになります。
これは、高齢者の方が日常的に使用する杖と共通したデザインであることから、その意図を容易に理解できるでしょう。
I(アイ)字型
グリップ部位がI字の形をしたタイプ。こちらのタイプは、スキーストックのようにグリップ部分を両手に握り、身体の前に構えて使用するものです。2本1組として使用することから「ダブル・ストック」とよばれています。
こちらのタイプは、あくまでも歩行時のバランス維持をサポートするように想定されているために体重をかけるような使用は避けてください。
ハイブリッドタイプ(混合タイプ)
前述のT字型とI字型の両方の機能を持ち備えたタイプです。上部は、T字型であり下部はI字型の形状をしています。このタイプのメリットは、1つの登山ストックを状況に応じて握り替えて使用することができる点です。
自分にあう登山ストックの選び方のポイント
登山ストックは経験や道の状況によって選ぶことも大切なポイントですが、何よりも安全にそして快適に使用できなければなりません。こちらでは、自分に適した登山ストックの選び方についてのチェックポイントをご紹介します。
使用方法
どのような登山ルート、状況下で使用したいかをあらかじめ決めておきましょう。使用目的に応じたグリップのタイプ(形状)から選ぶことをおすすめします。
グリップの種類
グリップの素材もゴム、コルク、ウレタンフォームなどから選ぶことができます。人それぞれ、握り方や手の状態も異なりますので自分の手に握りやすくてなじむもの、そしてとっさの時に強くしっかりと握れるものを選びましょう。
シャフトの長さ
長すぎても短すぎても身体への負担になりますのて各種類の適切な長さの選び方を覚えておきましょう。製造メーカーによっては、サイズが選べない場合もあります。
その場合には、初めて登山ストック選ぶ人は調整が可能なスクリュー式(ねじ締め式)やレバーロック式を選ぶのがおすすめです。
- T字型タイプは、自然と腕を身体の脇に下したときにグリップを握ることのできる長さを選びましょう。
- I字型タイプは、両肘を前方直角に曲げた状況でグリップを握ることのできる長さ(グリップ部分が腰骨あたりに位置する)を選びましょう。
アンチショック機能の有無
登山ストックには、地面にストックをついたときに生じる衝撃を内蔵されたバネなどで緩和する「アンチショック」機能が備えられたストックもあります。この機能が備えられたものは、地面にストックをついた時に沈み込む使用感があるのが特徴です。
また、このアンチショック機能は手首や腕への負担や疲労を軽減するために有効といわれていますが、部品が増える分登山ストック自体の重量も増加するデメリットも理解しておきましょう。
重さ
シャフトの素材は、主にカーボンファイバー(炭素繊維)とアルミの2種類があります。一般的にカーボンファイバーの方が軽いといわれていますが、強度や機能によって重量が異なりますので自分の目的とする使用方法に応じて選ぶことが大切です。
収納
荷物の重量や容量も登山の負担を軽減するためには大切なポイントです。登山ストックも使用目的に応じて、収納方法やサイズを確認したうえで選ぶようにしてください。例えば、お守り代わりに登山ストックを持参したい人ではコンパクトに収納できるものを選ぶとよいでしょう。
石突チップの交換可否
登山ストックは、使用を重ねる度に地面に直接当たる「石突チップ」というパーツが摩擦による削れなどでエッジ(角)が丸くなり消耗します。
このパーツが消耗すると、ストックをついたときに岩場などで滑りを生じるため、バランスを崩すだけでなく転倒する危険を生じます。このパーツは、消耗品として交換可能な製品と交換できない製品があることを覚えておいてください。
自分にあった登山ストックを長く愛用したいという人は、選ぶときにこの「石突チップ」の交換可否についても確認するようにしましょう。
初心者におすすめの登山ストック
初心者におすすめの登山ストックは以下の点が備えられたものです。しかし、使用環境や方法によっても評価が異なることも心得ておきましょう。
- I字型グリップの2本組のもの
- グリップが握りやすく、滑りにくいものであり、手首を動かしたときに取扱いが安楽なもの
- シャフト素材がアルミであるもの(カーボン素材を選びたい人は、耐久性を考慮して極端に細く軽いものは避けましょう)
- シャフトの長さ調節が可能なもの(握力の違いや安全な取扱いのために女性はレバーロック式、男性はスクリュー式(ねじ締め式))
- 収納が可能なもの(自分のザックに収まりやすいものを選ぶ)
- アンチショック機能の無いもの
- 石突チップが交換できるもの
登山ストックの使い方
登山に出向いたり、登山のレポートなどを読むとよく見かけるアイテムの1つが「登山ストック」でしょう。しかし、見栄えのするアイテムの1つですが、使用方法を誤ればけがや事故のもとにもなりかねません。
こちらでは、快適にそして安全に登山を楽しむために必要な「登山ストック」の正しい使い方をご説明しましょう。
「準備」としては、シャフトとストラップの長さを自分の体形に応じた適切な長さに調整します。状況に応じて適切なキャップなどを装着しておきましょう。グリップは、疲労の予防のために強く握りしめるのではなく軽く手を添える程度にもちます。