クライミング時のセルフレスキューや荷物の引き上げに重宝するクライミングギアといえば、カラビナやアッセンダーが挙げられますが、プーリーを上手く活用すればより簡単に重さを軽減することが可能です。
特にロープをつないだパートナーが予期せぬアクシデントに見舞われた時、プーリーなしでの引き上げは実際かなり厳しいでしょう。
倍力システムを生むプーリーは、フランスの人気クライミングブランドであるPETZL(ペツル)やアメリカのレスキューブランドSMC(エスエムシー)、そして近年注目の GM CLIMBING (ジーエムクライミング)などが人気を集めています。
クライミングに欠かせないギアであるプーリーの種類や選び方をしっかりマスターしていきましょう。
クライミング用プーリーの種類
クライミング用プーリーには幾つかの種類があります。まずは主力となるプーリーそれぞれの特徴を確認しておきましょう。
シングルプーリー
シングルプーリーはシンプルな形状をしており、荷物の引き上げ時に使用することで、摩擦を防ぎロープへのダメージを軽減してくれます。
名前の通りに滑車が1つついています。救助活動にも使用される基本のプーリーです。
ダブルプーリー
ダブルプーリーもその名が示すようにプーリー(滑車)が二つ付いているものです。
アンカーポイントとなるリギングや倍力システムを生み出すことに優れています。
タンデムプーリー
タンデムプーリーは谷などに張ったロープの上を移動するときに使用します。滑車部分が1つの場合、ロープを移送する際に深く沈み込みスムーズな動きをしないでしょう。
このタンデムプーリーは滑車が並んでいるので沈み込みにくく、スムーズな回転を生み出してくれます。
セルフジャミングプーリー
セルフジャミングプーリーは、トラクションプーリーとも呼ばれ、ロープの動きを制限し、一方向にしか動かなくするプーリーです。
ビレイデバイスとして使用すれば、大きな摩擦を抑えてくれるでしょう。しかしセルフジャミングプーリー の構造上ロープに負担がかかり傷みやすいといえます。
その他のプーリー
プーリーは上記のもの以外にも結んだロープも通せる「パッシングプーリー」やカラビナと一体化している「カラビナ型プーリー」などがあります。
クライミング用プーリーは一般のプーリーよりも全体的にサイズは小さめに作れていますが、シングルプーリーやダブルプーリーなどは大きなサイズもあり大小様々なサイズで作られています。
クライミング用プーリーの選び方
持ち運びが楽なもの
クライミング用のプーリーが通常のプーリーよりも小型のつくりになっているのは持ち運びに適した大きさに作られているからです。
小型で耐久度も高く、運用強度も強いプーリーがおすすめです。丈夫で軽量化されたプーリーならば持ち運びの負担にもなりません。
効率が良いのは大きいサイズ
小型で軽量のプーリーが持ち運びに便利であるといいましたが、使用時の負荷に注目してみると無駄な力をかけずに使用できるのは大きなサイズのプーリーのほうです。
持ち運び時の重さは出てきますが、複数のギアを使用するような折り返しの場合は効率よく稼働する大きいサイズのプーリーが向いています。
ロープの太さに合ったもの
クライミング用プーリーには対応しているロープの太さがあります。それぞれのプーリーのモデルによって対応しているロープの太さは違い、通常は太さ7mmから16mmの範囲となっています。
使用するロープは好みにもよりますが、プーリーに使用する場合はある程度細い方が流れがよく使い勝手は良いですね。しかし強度に関してはやはり太いロープの方が勝っています。
セルフジャミングプーリー なら安心度が高い
クライミング用プーリーを購入の際、まず選択すべきなのは自動でブレーキがかかるセルフジャミングプーリーか否かとなります。
セルフジャミングプーリーはカムを開いたまま使用できるので、通常のプーリーとしても使用することが出来ます。
また自動でブレーキがかからない状態ではプル―ジャックの結びをしないと手が滑ったり離れた際にロープがスルスルと戻ってしまいます。
その点、手が離れてもそのままの状態でストップするセルフジャミングプーリーは安心です。デメリットはブレーキをかける際に棘のようなものをロープに刺すのでロープ自体を傷つけてしまうということです。
プーリーを使い慣れていない人や安心してプーリーを使用したい人におすすめです。
クライミングギアとの相性
クライミング用プーリーは対応するロープの太さの他にも、自分が使用するクライミングギアとの相性も大切になります。
例えばサイドプレートが固定式のプーリーはオーバル型カラビナのようにカラビナのタイプによっては使いにくくなります。
またクライミング用プーリーのアタッチメントホールの大きさが自分の使用するギアに対応しているかを確認しましょう。
破断強度MBSに注意する
「Minimum Breaking Strength(ミニマム ブレイキング ストレングス)」と英語に直すとわかりやすいですが、破断強度MBSとは最小の破断強度のことです。
クライミング用プーリーのサイドプレート部分に表示されている破断強度MBSは、kNで表され力の大きさを示しています。質量の単位に直すことは難しいですが、おおよそ1kNは102kgと換算されます。
MBSが20kNと表示されている場合、質量に換算すると2040kgとなります。注意が必要なのはプーリーの性質です。50kgの負荷をかけてもシングルプーリーで100kgの負荷がプーリーにかかります。
これは全てのロープに同じ負荷がかかる為で、ダブルプーリーの場合は50kgの負荷をかけると×4となり200kgの負荷がプーリーにかかることになります。
更にMBSをプーリーの耐久強度だと思う人が多いですが、MBSは最小の破断強度です。いいかえれば壊れる値なので使用の際は注意が必要です。
クライミング用プーリーおすすめ人気ランキング10位~4位
クライミング用プーリーの種類や選び方を確認しましたが、自分にとって必要なプーリーはどれか候補は絞られてきたでしょうか。
次は多くのクライマーが選んでいるプーリーを人気ランキング式で発表します。是非参考にしてみてください。
10位: 登山アルミレスキュープーリ
13mmのロープに対応しているシングルクライミングプーリーです。 破断強度MBS は20kNで運用強度は10kNとなっています。
サイズは縦が8.2cmで横が4.4cmと小型で使いやすいタイプです。ボールベアリングなので負荷が大きくなってもスムーズにロープが流れます。
9位: PETZL マイクロトラクション P53
フランスの人気ブランドペツルのセルフジャミングプーリーで、対応しているロープは8mmから11mmです。重量は85gと軽量な作りになっています。
破断強度MBSは15kNで運用強度は5kNです。91%を誇る効率の良さが特徴でロープとの摩擦を抑えるシールドボールベアリングが採用されています。
8位: GM CLIMBING ジップラインアドベンチャー
GM CLIMBINGのダブルプーリーです。対応しているロープは13mmで破断強度MBSは25kN です。
UIAA(国際山岳連盟規格適合)のプーリーで、強度の強いステンレス素材を使用したダブルべアリングなので耐久性に優れています。
7位: GM CLIMBING 29kN フィックスサイド マイクロプーリー
破断強度MBSが29kNのGM CLIMBING製のマイクロプーリーです。コンパクトで使いやすくマイクロプーリーのデメリットでもある騒音を抑えた作りとなっています。
CE(ヨーロッパ基準)とUIAA(国際山岳連盟規格適合)の認証を得た信用あるプーリーです。プーリー回転時の摩擦も抑えてあるので効率良く使用可能です。
6位:PETZLオシラント P02A
ペルツのシングルクライミングプーリーです。破断強度MBSは15kNで運動強度は4kNです。対応しているロープは7mmから11mmとなっています。
42gと軽量な作りでサイドプレートが可動式に作られているのでカラビナなどへのセットも簡単に行うことが出来ます。ロープの通りがスムーズで良いという意見が寄せられています。
5位: GM CLIMBING スーパーコンパクト 30kN
GM CLIMBINGのマイクロプーリ―です。コンパクトで軽量な構造にもかかわらず破断強度MBSは30kNと強く様々なシーンで活躍してくれます。
サイドプレートが180度動くのも魅力で他のクライミングギアとの相性も良いですね。対応ロープは13mmまでとなっています。
4位: PETZL フィックスP05SO
人気ブランドペルツの固定式サイドプレート付プーリーです。破断強度MBSは23kNで運用強度は5kN、重量は90gと軽量な作りになっています。
摩擦を減らす自己潤滑性ブッシュを使用しているので、効率が良くロープワークを滑らかに行うことが出来ます。使い勝手が良いという意見が寄せられています。
クライミング用プーリーおすすめ人気ランキング3位~1位
クライミング用プーリーの上位には注目度が急上昇中のGM CLIMBINGのプーリーが選ばれています。
中国ブランドですがいずれもCE(ヨーロッパ基準)とUIAA(国際山岳連盟規格適合)をクリアしている品質のいいプーリーです。
3位:GM CLIMBING 32kN ボールベアリング モバイルプーリー
GM CLIMBINGのボールベアリング採用のプーリーは破断強度MBSが32kNと高強度です。サイズも大きく直径が58mmなので様々な用途に使用可能ですね。
サイドプレートは可動式でアタッチポイントが大きいのでカラビナを複数付けることも可能です。最大で16mmのロープに対応し、フルボールベアリングを採用しているので摩擦の少ないロープワークを可能にしています。
CE(ヨーロッパ基準)とUIAA(国際山岳連盟規格適合)をクリアした商品です。
2位:GM CLIMBING 20kN モバイルサイド マイクロプーリー
GM CLIMBINGのマイクロプーリーは破断強度MBS20kNで、13mmのロープに対応しています。アルミ製で重量は105gと軽くサイズは縦が81mmで横が57mmとコンパクトな作りになっています。
サイドプレートは360度回転し、ロープの着脱や他のクライミングギアとの相性も抜群です。また摩擦を抑えた構造でスムーズなロープワークが可能です。
こちらのプーリーもCE(ヨーロッパ基準)とUIAA(国際山岳連盟規格適合)をクリアした商品となっています。
1位:GM CLIMBING 40kN マイクロダブルプーリー
人気1位はGM CLIMBINGのダブルプーリーです。コンパクトな作りで航空機等級の7075アルミニウム合金を使用しているので、高強度を誇っています。破断強度MBSは40kNで対応しているロープは12mmです。
またボールベアリングを採用しており無駄を省き効率を上げています。CE(ヨーロッパ基準)とUIAA(国際山岳連盟規格適合)をクリアした信頼性のある商品として人気を集めています。
更にスーパーコンパクトと呼ばれる程のミニサイズで縦が100mmで横が61mmと軽量で操作しやすいプーリーになっています。
プーリーを常備し効率のいいクライミングをしよう
クライミング用のプーリーはあまり注目されていないのが現状です。荷物を減らすためにカラビナなどで代用する人が多いのです。
しかしクライミング用プーリーを常備していれば、もっと効率よく確実に引き上げを行うことが可能です。大きさやタイプなどを適切に選んでクライミングを更に快適なものへ変化させましょう。