近年、呼吸の大切さがクローズアップされています。
呼吸は通常人間の脳からの指令で無意識に行われますが、自分でコントロールすることも可能です。
今回注目する腹式呼吸は、一般的に自律神経を整える呼吸といわれていますが、自律神経を整える効果は多大にあります。
そして意外なことに正しい腹式呼吸は、腰痛予防や肩こりの予防にも繋がってくるのです。
筋肉や横隔膜への影響を解説しつつ、上手に腹式呼吸を行う為のコツを伝授したいと思います。
腹式呼吸を行う上での注意点もお見逃しなく。
腹式呼吸が筋肉に与えるメリット
腹式呼吸は主に横隔膜を使用して行う深い呼吸です。
意識して行うことで、様々な筋肉に働きかけ多くのメリットを生み出します。
腹横筋
腹横筋は腹部のインナーマッスルと呼ばれる筋肉です。
肋骨の下部から恥骨まで伸びており、腸骨を覆うように存在しています。
腹式呼吸で息を吐くとお腹が凹みますが、この時に使用する筋肉なのです。
腹横筋はインナーマッスルとして体幹部分を保持する働きを持っており、腰を守るコルセット的な役割を担っています。
お腹のポッコリ具合が気になる、という人はこの腹横筋を鍛えることでグッと引き締まった腹部を手にすることが出来るでしょう。
多裂筋
多裂筋も腹式呼吸で使用される筋肉で、背骨に沿うように存在しています。
姿勢を保つうえで重要な筋肉で、主に上体を反らせる時などに使用されます。
また多裂筋は特に腰の部分が太くなっており、負荷がかかりやすいので腰痛の原因ともなる筋肉なのです。
こちらの筋肉もしっかりと鍛えることで、腰痛の予防や美しい姿勢の保持が可能となるはずです。
骨盤底筋群
骨盤底筋群は、特に産後の女性が鍛えておくべき筋肉といえるでしょう。
恥骨や座骨、尾骨などに繋がりハンモック状の筋肉と呼ばれています。
加齢で弱ってしまう部分でもあり、尿漏れなどは主にこの筋肉が弱ることで起こります。
また、骨盤底筋群が弱くなると骨盤がズレやすくなるので、太りやすくなったり腰痛を感じたりするのです。
骨盤底筋群は鍛えにくい部位ですが、腹式呼吸によってしっかりと引き締めておきましょう。
横隔膜
腹式呼吸で最も意識しやすい筋肉は横隔膜で、特に息を吸う時に横隔膜が下がるのを感じるのではないでしょうか。
肋骨の中部(5番)ほどにあり、その名の通り膜のように存在しています。
腹部の筋肉と共に腹圧に関係してくるので、便秘の改善などにも関わりの深い部分といえるでしょう。
横隔膜を刺激するメリット
腹式呼吸は横隔膜を大きく上下させています。
横隔膜を刺激することで得られるメリットとは一体どんなものなのでしょうか。
肩こりに効果的
意外に感じる人がいるかもしれませんが、腹式呼吸で横隔膜を使用すると肩こりの予防にも繋がります。
胸式呼吸を続けていると肺や肩、首などに緊張を感じやすくこりが生じる場合もあるのです。
息を吸い込むときに大きく横隔膜を下げることが出来れば、これらの負担が軽減されます。
便秘の改善にもなる
先程も記述しましたが、横隔膜は腹圧とも大きな関係があります。
実際に腹式呼吸を行ってみると解りやすいのですが、横隔膜の上下によって腹圧が変化するのです。
腸を刺激することになり、腹圧を上げることで排便にも効果を発揮してくれるのではないでしょうか。
自律神経を調節してくれる
現代人は多くのストレスを受けています。
その為交感神経が優位になりがちで、様々な体の不調が問題となっているのが現状です。
体調管理は交感神経と副交感神経のバランスが鍵を握っています。
過剰になった交感神経を鎮める為にも、深い腹式呼吸は有効とされているのです。
自律神経は自分でコントロールすることはなかなか難しいといわれています。
しかし、横隔膜の辺りには自律神経が集まっています。
腹式呼吸で自律神経を刺激することで副交感神経を優位にすることが出来るようです。
イライラを抑えることが出来る
横隔膜を刺激し、自律神経が整うことで「セロトニン」の合成が進みます。
セロトニンは別名「幸せホルモン」と呼ばれており、イライラを抑えたり不眠やうつ病などの予防、改善に効果を発揮してくれるのです。
またセロトニンは腸の働きに大きく関係してします。
腹圧を変化させ腸を刺激することが、セロトニンの増加にもつながるのではないでしょうか。
腹式呼吸はなぜ腰痛予防になるのか
リラックス効果の高い腹式呼吸ですが、腰痛予防に腹式呼吸を薦める病院も多いようです。
腹部のインナーマッスルが鍛えられるから
腹式呼吸は、腹横筋はじめ多裂筋や骨盤低筋群など腹部のインナーマッスルを強くします。
これらはいずれもコルセット的な役割を担っており、強化されることで筋肉によるコルセットが完成するのです。