運動会の徒競走に象徴される、走力=運動神経というイメージ
「運動神経が良い=足が速い」とイメージしがちな日本人。
スポーツと学校体育との間に一線を引いている欧米と異なり、日本はこれらが混在することが多く、例えば小学校の運動会、特に徒競走はその象徴として見られていることが多いようです。
冷静に見れば、運動会の徒競走は組み合わせもランダムで、校庭のコンディションも一定ではありません。
トラックを使う場合も校庭のサイズに合わせた特殊なものが多く、陸上競技の短距離走とは似て非なるものなのですが、親も子も徒競走に傾ける情熱はかなりのものです。
リレーの選手に選ばれでもすれば、注目度も一層高まります。
冷静に見れば、1クラス40人でリレー代表を男女それぞれ2名選出すると、10人の中で1人、というレベルです。
これは同学年全体で見れば秀でて俊足、という訳でもないでしょうが、「足が速い」ということが特に小学生の頃は重要に扱われがちです。
球技人気の高さも影響?走力の注目度の高さ
「足が速い」という能力と比べて、「速く泳げる」「体操が上手い」というのは日常生活ではなかなか披露する場がありません。
いわゆる運動神経として考えた場合、短距離走より体操が上手い方がベターだと考えられますが、走力は人気の高い球技であるサッカーや野球、バスケットボールなどで重要な能力であること、そして下半身が発達している点が球技をやる上でメリットになることなどから、「足が速い=スポーツの素質がある」という見方をされることが多そうです。
走力はトレーニングで上げられる
一般的には「走力は先天的な能力」「足が速いのは才能」という認識がされがちですが、実は走力を後天的に上げるのはそれほど難しいことではありません。
無論、オリンピックを目指すようなレベルで考えた場合は生まれ持っての才能が必須です。
短距離走やジャンプ競技に強い黒人は、腸腰筋という筋肉が日本人の大多数を占める黄色人種に比べると3倍ほど太いと言われています。
鍛えても埋められない差は存在するでしょう。
とは言え、同じ小学生の中で「速く走る」トレーニングをした生徒が、トレーニングしていない生徒を上回るのは容易です。
そのための理屈を知ることが出来れば、ご納得いただけるはずです。
「足が速い」の基準
やや話が逸れますが、長距離走と中距離走、短距離走では走り方が違うし、野球のベースランニングもサッカーのフリーランニングも全く違います。
メキシコ五輪に出場し、短距離走者で100mの日本記録を保持した飯島秀雄氏は、1969年から3年間、プロ野球選手としてロッテオリオンズに盗塁のスペシャリストとして在籍したことがあります。
3年間で23盗塁に成功したものの、盗塁失敗17で成功率57.5%と凡庸な成績に終わりました。
飯島秀雄
元100m走日本記録保持者であり、東京五輪とメキシコ五輪に出場。
陸上競技を引退後は、走塁のスペシャリストとしてロッテオリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)に入団。#プロ野球選手そんなやついたな選手権 pic.twitter.com/a4EIKX0ctc— カリブの怪物 (@jamaican_bolt) October 3, 2016
成績が奮わなかった理由として代走屋としてマークされていた、という説もありますが、一時は世界記録を持っていた盗塁王・福本豊は生涯で1065盗塁、失敗が299、成功率が78%に達しています。このケースから見ても、実は「足の速さ」を単純化するのが困難なことだと分かります。
それ故に運動会の徒競走が指標化されてしまう面があるのでしょう。