交通手段やアクティブレジャーとしてすっかり人気が定着したサイクリング。スポーツサイクルやシティサイクルの違いはあれど、最も重要なのは乗り心地でしょう。
自転車の走行感覚の違いを最も実感しやすいのは、やはりタイヤの空気圧です。空気を入れたての自転車と抜けかけの自転車の走りやすさの違いは、誰もが実感するものです。
空気圧、つまり走りやすさにはタイヤの違いももちろんですが、もう一つキーになるパーツ、バルブがあります。より快適なサイクリングを実現するために、バルブの種類や選び方を解説し、おすすめのバルブをランキング形式でご紹介します。
自転車のバルブによる違い
バルブとは自転車のタイヤ内部に入っているチューブに空気を注入するための金属性のパーツのことで、空気圧のコントロールに重要な役割を果たすものです。主に英式・仏式・米式の3種類のバルブがあります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
英式バルブの特徴
英式のバルブは、最も広く流通しているタイプのバルブです。主にシティサイクル(いわゆるママチャリ)に採用されています。ナットと虫ゴム(空気漏れを防ぐゴム製の栓)で構成されており、シンプルな構造のため流通量も手伝って、価格が安いことが最大の特徴です。
また、英式バルブ用のチューブや空気入れなども容易に手に入り、管理がしやすく手軽に使えることもメリットです。
反面、細かな空気圧の調整は構造上苦手で、走りやすさを求めるスポーツサイクル(ロードバイクやクロスバイク、マウンテンバイクなど)にはあまり採用されていません。
また、耐久性もあまり高いとはいえず、特に虫ゴム部分は劣化しやすいため、使用頻度によりますが半年に一度を目安に交換する必要があります。
米式バルブの特徴
米式のバルブは自動車やオートバイにも使われているバルブで、自転車では主にクロスバイクやマウンテンバイクに採用されています。金属製のブランジャーと呼ばれるバネ付きの空気弁が取り付けられています。
米式バルブの特徴は空気漏れが少なく、空気入れの頻度が少なくてすむこと。最も負担の大きくなる空気弁がゴムではなく金属製で、バネの伸縮力を利用しているためパーツそのものも劣化しにくくなっています。
また、ガソリンスタンドで空気を入れられるというメリットもあります(自動車や単車と構造が共通しているため)。
さらに英式と比べて扱い方にクセがあるものの、慣れれば細かい空気圧の調整も可能です。英式と仏式の良いとこ取りといったイメージです。
一方でバルブそのものが構造上大型化しやすくなり、重いことが弱点です。そのため軽さやスピードを求めるロードバイクにはあまり採用されません。また英式や仏式のバルブと比べて流通量が少ないため、パーツ交換にやや手間がかかることも難点でしょう。
仏式バルブの特徴
仏式のバルブはロードバイク・クロスバイク・シクロクロスなどのスポーツバイクに多く採用されており、純粋に走行性能を求める車体と非常に相性の良いバルブです。
バルブ内部にブランジャーを空気弁として取り付け、さらにその上からネジで閉める構造になっているため、英式や米式より細長い外観が特徴です。
その緻密な構造上、空気圧を最も細かくコントロールでき、路面状態や走行フィーリングによってかなり幅広く調整できるでしょう。また、限界空気圧が最も高いこと、パーツ自体が軽量なこともスポーツバイクに採用されている理由です。
繊細な構造になっているため、劣化しやすいという意味ではないもののパーツそのものの頑強性はそれほど高くはなく、衝撃を受けると折れてしまうこともあります。その割にパーツ代が英式と比べ高額になりやすい点も悩みどころです。
自転車のバルブ選びのポイント
自転車のバルブが3種類あることはわかりましたが、実際にバルブを選ぶ際にはどのようなことに気をつければ良いのでしょうか?ここではバルブ選びのポイントを5つに分けてご紹介します。
タイヤの空気圧で選ぶ
自転車のバルブやチューブ、タイヤには必ず適正空気圧が設定されています。「ここからここまでの空気圧になるように入れてください」という数値です。勘違いしてしまいやすいのですが、自転車の適正空気圧は車種で決まっているのではなく、タイヤで決まっています。
つまり、限界空気圧が低く設定されているシティサイクルなどのタイヤに、仏式のバルブを組み合わせて使う場合、バルブ側の適正空気圧に合わせるとタイヤ側が耐え切れずパンクなどの原因になる可能性があります。
反対にタイヤ側の適正空気圧に合わせるとバルブやチューブの空気圧が低く、これも破損の原因になる可能性があります。
まずは自分の自転車のタイヤの側面に記載されている空気圧を確認し(KpaやPSIなどの数値が一般的です)、それにあったバルブを選ぶというのが基本的な考え方になります。
耐久性で選ぶ
パーツ劣化による交換の手間、または走行中の不意な破損の可能性を考えた時、耐久性はとても重要なポイントです。劣化も破損もしにくいという2点からいうと、最もおすすめなのが米式のバルブです。
重く流通量が少ないという弱点こそありますが、構造的にも使用パーツから考えても劣化しにくく、壊れにくくなります。特に舗装路ではなく、自然道や山道などの悪路をマウンテンバイクなどで走行する場合は空気圧の高さより耐久性が重要になることが多いので、米式バルブがおすすめです。
汎用性で選ぶ
自転車の専門知識があまりない、バルブ選びで失敗したくないという方は安価で交換の手間も少なく、車種の選択の幅が広い英式のバルブがおすすめです。
特に自転車を駅までの通勤手段や買い物の交通手段として使い、あまり遠出をしないという方はそこまで空気圧を気にする必要もないので汎用性の高い英式バルブがよいでしょう。
空気入れの頻度や虫ゴムの交換が気になる方は、コストがややあがりますが耐久性と空気保持力がアップした英式のスーパーバルブに交換するという手もあります。
走行性で選ぶ
本格的なレジャーとしてサイクリングを楽しみたい、長い距離を気持ちよく走りたいという方には、仏式のバルブがおすすめです。スポーツバイクのタイヤは適正空気圧が総じて高めに設定されているからです。他のバルブではタイヤや車体の走行性能を十分に引き出せない可能性があります。
また、ピーキーでカチカチの走行感が好きな方、少し粘りがあって路面に吸い付く感触が好きな方など操作フィーリング・体格・天候・走行路面などによって繊細な空気圧のコントロールができることも、仏式バルブならではの魅力です。
タイヤの種類で選ぶ
選び方というよりも注意事項ですが、自転車のタイヤには内部にチューブが入っているチューブリータイヤと、チューブのいらないチューブレスタイヤの2種類があります。バルブを交換する際は、必ずそれぞれのタイヤ(チューブ)に対応したバルブを選んでください。
チューブレスタイヤの場合、タイヤ側面にTUBELESSと記載されています。記載がなければチューブリータイヤです。
自転車のバルブ交換方法について
バルブの交換を考える人は、走行性や耐久性を考慮してたいてい英式から米式、あるいは仏式バルブへの切り替えを検討することが多いです。その際にどのような方法で交換するかで工数や難易度、費用も変わってくるでしょう。
最も簡単なバルブ交換方法
バルブの交換方法として最も手軽なのは、バルブの先端、アダプタ部分だけを交換する方法です。バルブコアを引き抜いて米式や仏式のアダプタを差し込むだけで良く、工具も必要ありません。アダプタはどちらの場合も1500円前後で交換可能です。
その他の交換方法
アダプタが一体型になっているタイプのバルブの場合や、チューブの劣化が気になる、さらにこだわりたいなどの場合はチューブ、またはタイヤごとバルブを交換する方法もあります。
このケースではタイヤを一度取り外す必要があること、バルブの口径の違いを埋めるスペーサーというパーツが必要になることを考えるとやや専門的な作業です。単純に空気漏れが気になるという方は、英式の場合まずは虫ゴムの劣化をチェックするのがおすすめです。