公式大会では世界で初めて4回転フリップを成功させた日本人フィギュアスケーター、宇野昌磨選手。
ギネス記録として認定されたことはもちろん、10代の宇野選手が世界の並み居る強豪を押しのけて「初」を奪い取ったことに、日本中が沸き立ちました。
アニメやゲームが大好きなことはよく知られていますが、それ以上に好きなのが「練習」です。宇野選手は自身が持つ長所を伸ばし、苦手を穴埋めするためのトレーニングを積み重ねています。
ジャンプは「宇野選手の鬼門」とされてきましたが、ジャンプ克服のために海外へ渡り過酷なトレーニングを行いました。今ではかつての「鬼門」を微塵も感じさせません。
技術面のみならず肉体的なブラッシュアップがなされた証といえるでしょう。
View this post on Instagram
彼の魅力はジャンプだけではありません。身長が160cmに満たない小柄な体でありながら、表現力豊かで力強い滑りを見せてくれる宇野選手。
その秘訣は見た目から分かる筋肉質の肉体、そして見た目では分からない体の内側に及ぶ鍛錬にあります。
今回は、宇野昌磨選手の滑りを支える強靭な肉体の作り方、そして小柄な体を活かした戦い方に迫ります。
宇野選手の肉体を総合的に磨き上げる一本歯下駄トレーニング
フィギュアスケート選手は陸上と氷上でのトレーニングを並行して行います。リンクは使用できる時間が限られることから、基礎的な筋力アップなどは陸上トレーニングで補うケースが大半です。
そんな中、宇野選手が陸上トレーニングの一環として取り入れていたのが、一本歯下駄を使用したトレーニングです。「天狗下駄」とも呼ばれているこの下駄は、中央に横向きの歯が1本ついています。
身体軸 小平奈緒の一本歯下駄 https://t.co/B2lvoDpUYo pic.twitter.com/mrZua1Jrh1
— トレンド情報 (@trendsinf) 2018年1月30日
実は宇野選手の他、スピードスケートの小平奈緒選手も一本歯下駄トレーニングを取り入れています。
一本歯下駄とはいえ人間の足は2本。バランスを取るのはそう難しくはないように感じますが、実際履いてみるとバランスを取るだけで精一杯。
バランスを取る、つまりは体幹トレーニングとして有効です。また柔軟性を向上させる効果もあります。
しかし一本歯下駄で立つことができなければトレーニングになりません。まずはバランスを取って立つところからスタートです。
クリアできたら具体的なトレーニングメニューに進んでいくといいでしょう。
これができなければ始まらない!一本歯下駄でバランスを取る方法
- 一本歯下駄を履いて立ちます。この時点ではつま先や踵を床につけてOKです。
- 首や肩周りを脱力して揺らします。
- 2.に加え、お腹の力を抜いてみぞおち辺りを揺らします。
- 3.に加え、股関節や膝を脱力して揺らします。
- 2.〜4.を行うと自然に左右の足が動き、一本歯下駄でバランスが取れていることに気づきます。
【ポイント】
下を向いてしまうとバランスが崩れます。
足元は気にせず前を向いたままでトレーニングを行いましょう。
バランスが取れたら一本歯下駄で体幹トレーニング
- 一本歯下駄で立ちます。
- 膝を徐々に曲げて腰を落としていきます。
- 足首、膝、股関節がしっかり曲がった状態をキープします。
【ポイント】
足元は気にせず前を向いたまま行うほうがバランスが取りやすくなります。
足の筋力ではなく、体の軸を意識して動かしながらバランスを取るのがコツです。
体幹力だけでなく柔軟性も向上させる一本歯下駄トレーニング
- 一本歯下駄を履いて前屈の姿勢からスタートします。
- 右の踵を地面につけると同時に左膝をわずかに曲げて前に出し、左手を地面につけます。
- 左の踵を地面につけると同時に右膝をわずかに曲げて前に出し、右手を地面につけます。
- 2.〜3.を繰り返します。
【ポイント】
踵は強く踏み、逆側の膝は「曲げる」というより「力を抜く」ことを意識します。
慣れてきたら、片手を地面につけるのではなく片胸を地面に近づけるようにするとトレーニング効果が更にアップします。
一本歯下駄トレーニングで宇野選手の肉体はどう変わる?
宇野選手は一本歯下駄を履いたままランニングや日常的なトレーニングができるほどのバランス感覚を持っています。
これまでのトレーニングによって身についた体幹による部分もあるかもしれませんが、一本歯下駄トレーニングで更に体幹力が向上したことでしょう。
一本歯下駄トレーニングで宇野選手の肉体は次に挙げる3点が変わったと考えられます。
- 体幹を支えるインナーマッスルが更に強化された
- 立ち姿勢が美しくなった
- 柔軟性が向上した
慣れるまでは常に体幹を意識していなければ立っていられない一本歯下駄は、鍛えようと思わずともインナーマッスルが鍛えられます。
氷の上でジャンプや回転といった動きをするフィギュアスケート選手にとって、体幹力は演技の完成度を左右する重要な要素です。
【関連記事】インナーマッスルの鍛え方!深層筋のトレーニング方法とは?
美しい姿勢が宇野選手に及ぼす効果とは
一本歯下駄を履いて静止した状態で横を向き、鏡で姿勢を確認してみてください。首の付根から肩、骨盤の中心、膝、そして足首までが一直線上か、それに近い位置にあるはずです。
実はこれが人間の理想の姿勢だといわれています。
他の選手と比べて身長が低い宇野選手が演技をよりダイナミックに見せるためには、美しい姿勢で演技をすることがとても重要です。
一本歯下駄トレーニングによる姿勢矯正が、宇野選手の演技を更なるハイレベルへと押し上げているのです。
【関連記事】【広背筋のストレッチ】自宅で出来る広背筋のストレッチで猫背解消、背中スッキリを実現!
宇野選手にとって柔軟性は必要?
宇野選手の代名詞となりつつあるのが「クリムキンイーグル」です。足先を180度に開いて上半身を反らせる技で、宇野選手は幼い頃からこの技を習得していました。
View this post on Instagram
クリムキンイーグルに必要なのは体幹やバランス力、筋力、そして何といっても柔軟性です。
体幹や筋力は多くのフィギュアスケーターが持っていますが、クリムキンイーグルでハイスコアをマークできる柔軟性を有する選手は数えるほどでしょう。
一本歯下駄トレーニングは、アキレス腱など足首周りの柔軟性を高める効果があります。
もともと柔軟性が高い宇野選手は一本歯下駄トレーニングを行うことで更に足首が柔軟になり、海外からも絶賛される美しいクリムキンイーグルを成功させているのです。
片足ジャンプで実践的なバランストレーニング
バランスを崩しやすい氷上と同じ状況を陸上に作り出し、実践に近い動きを取り入れたトレーニングも行っています。それが片足ジャンプトレーニングです。体幹力アップや関節の柔軟性向上に効果があります。
実際に宇野選手がトレーニングをしている動画をご覧ください。
着氷をイメージ!片足ジャンプトレーニング
0分20秒から、青いウレタンマットでポーズを取る宇野選手が映し出されます。次のウレタンに移動すると同時にポージング、そして次のウレタンに移動。ポージングは5秒ずつ行っているようです。
動画を見て分かる通り、このトレーニングは宇野選手の怪我のリハビリとして取り入れられたものです。
ウレタンは衝撃を吸収する役割がありますが、同時に不安定さを生み出すのにも一役買っています。ウレタンの上に片足で立ってバランスを取るのはなかなか難しいでしょう。
通常のトレーニングではジャンプから着地してポージング、という流れだと推測できます。そこで今回はバランスドームを使った片足ジャンプトレーニングをご紹介します。
片足ジャンプと片足着地でバランスを保つトレーニング
ウレタンよりも更に安定性を欠くバランスドームを使ったトレーニングです。
この動画では踏み切り足と着地足が同側ですが、まずは宇野選手と同様に左右交互に着地してバランス保持ができるようにするといいでしょう。5秒という制限時間はぜひ取り入れてください。
バランスドーム上で静止するために必要な要素
5秒間でぴたりと静止するためには筋力よりも体幹が必要です。ただ静止するだけであれば筋力のみでも体勢が維持できるでしょう。しかし余計な力が入ってしまうとポージングができません。
筋力はポージングの維持に使い、体幹力でバランスを取るようなイメージです。
体幹と同時に重要なのが、足首の柔軟性です。ジャンプからの着地では足に少なからず衝撃を受け、衝撃が強いほどバランスが崩れやすくなります。この衝撃を吸収するのが足首や膝です。
特に足首の可動域は人によってかなり差があり、可動域が広い=足首が柔らかいとそれだけ衝撃吸収力が高くなります。
片足ジャンプで着地とともに素早くバランスを取るためには、衝撃をいかに大きく素早く吸収できるかがポイントです。
【関連記事】硬い足首がストレッチで柔軟に!効果的なストレッチ3選!
体全体の安定感を底上げするスタビライズトレーニングで宇野選手の筋肉が発達
非常に筋肉質に見える宇野選手ですが、あらゆるインタビューで「筋肉をつけるための筋トレはやっていない」という趣旨の発言をしています。
最近は体幹トレーニングをメインに据えている選手が多く、よく耳にする言葉かもしれません。
しかし体幹トレーニングのみ行っているにしては、宇野選手の体は無駄なく筋肉が発達している様子が見て取れます。
実は宇野選手、体幹トレーニングの他にもスタビライズトレーニングを取り入れているのです。このトレーニングの結果、筋肉が必要に応じて発達したのだと推測できます。